『塩狩峠』
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『塩狩峠』［ 鏡 ］1 明治十年の二月に永野……
明治十年の二月に永野信夫は東京の本郷で生まれた。〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］2 「お前はほんとうに顔……
「お前はほんとうに顔かたちばかりか、気性までおかあさんにそっくりですよ」〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］3 祖母のトセがこういう……
祖母のトセがこういう時はきげんの悪い時である。亡き母に似ているということは、決してほめていう言葉ではないことを、信夫…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］4 （おかあさまって、ど……
（おかあさまって、どんな人だったのだろう？）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］5 母は信夫を生んだ二時……
母は信夫を生んだ二時間あとに死んだと聞かされている。信夫は今、鏡に向かってつくづくと自分の顔をみつめていた。形のよい…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］6 （おかあさまは、きれ……
（おかあさまは、きれいな人だったんだなあ）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］7 十歳の信夫は、その濃……
十歳の信夫は、その濃い眉に走る自分の利かん気な表情には気がつかない。〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］8 （何でおかあさまにそ……
（何でおかあさまにそっくりなのが悪いんだろう？）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］9 信夫はトセの胸の中を……
信夫はトセの胸の中を知るはずもない。〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］10 やがて信夫は口をへの……
やがて信夫は口をへの字に曲げてみる。死んだ母親もこんな風な顔をしたのだろうかと信夫は思う。片目をつぶる。眉をつりあげ…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］11 （おかあさまはこんな……
（おかあさまはこんなにして笑ったのかな）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］12 信夫はもう一度笑って……
信夫はもう一度笑ってみた。こんどは大きく口をあけて歯をながめた。一本のむしばもなく白い歯がならんでいる。奥に下がって…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］13 （何でこんなものがあ……
（何でこんなものがあるんだろう）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］14 母にも、こんな妙なも……
母にも、こんな妙なものが下がっていたのかと思うと、信夫の胸のあたりが、ふいにへんなかんじがした。ふだんはそれほどにも…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］15 「信夫、何を泣いてい……
「信夫、何を泣いています？」〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］16 うしろで祖母のトセの……
うしろで祖母のトセの声がした。祖母はがっしりとした体つきで、怒ると父の貞行よりずっと恐ろしい。だがだいたいにおいて信…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］17 「のどに手を入れたら……
「のどに手を入れたら涙が出たの」〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］18 信夫はそういったが、……
信夫はそういったが、ほんとうは何となく悲しくなって出た涙のようにも思われた。〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］19 「ばかなまねをしては……
「ばかなまねをしてはいけませんよ。人前で涙を見せるのは平民です。うちは士族ですから、そんな恥ずかしいことをしてはいけ…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］20 祖母はそういって、信……
祖母はそういって、信夫のそばにぴたりと坐った。祖母がひざをくずした姿を、信夫は一度もみたことがない。だから女はみんな…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］21 信夫の家に出入りして……
信夫の家に出入りしている小間物屋の六さんという男がいる。六さんは櫛とか羽織のひも、半えり、糸、はさみなどを、重ねた箱…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］22 「ごいんきょさま」……
「ごいんきょさま」〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］23 六さんはトセのことを……
六さんはトセのことをそう呼んだ。六さんはこの二、三年ほど前、新潟から東京に出てきたばかりである。トセの故郷も新潟だっ…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］24 信夫も六さんがくるの……
信夫も六さんがくるのを待ちかねていた。六さんが好きなのではない。六さんがときどき連れてくる虎雄という子供がいたからだ…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］25 信夫の父は日本銀行に……
信夫の父は日本銀行につとめていた。家は本郷の屋敷町にあり近所にはあまり同じ年ごろの子もいなかったせいもあって、信夫は…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］26 いつか信夫は六さんに……
いつか信夫は六さんに連れられて、一度虎雄の家に遊びに行ったことがある。ガタゴト音のするどぶ板を踏んで、戸をあけるとい…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］27 （女もあんなにぎょう……
（女もあんなにぎょうぎが悪いのか）〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］28 信夫はつくづくと思っ……
信夫はつくづくと思ったものである。〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
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『塩狩峠』［ 鏡 ］29 今も祖母がきちんとひ……
今も祖母がきちんとひざをそろえて信夫のそばに坐った時、信夫は何となく虎雄の母の姿を思い出した。〈作品本文の凡例〉https…
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『塩狩峠』［ 鏡 ］30 「涙はぜったい人に見……
「涙はぜったい人に見せてはいけませんよ」〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463
