『塩狩峠』[ かくれんぼ ]75 とねだっている。それ……

とねだっている。それをきいているうちに信夫はひどく寂しくなってきたのだ。信夫には美乃がどんな子供でどんな家に住んでいるかもわからない。どんな魚がその家にあるかもわからない。しかし、母の待子には、よくわかっているのだ。自分の知らない人たちや、知らない家の話を、話し合っている二人に信夫は嫉妬した。自分だけが母の子でないような、ひがみすら感じた。


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