『果て遠き丘』[ 起伏 ](三)1 香也子はさっきからい……

香也子はさっきからいらいらとしている。いまもふいと立って洗面所にきた。恵理子の前にすわっていると、何かたまらなくなるのだ。鏡をのぞいて、香也子はパフで鼻の頭をおさえる。唇の輪郭を口紅でととのえる。ちょっと笑ってみる。われながら愛らしいと思うのだが、恵理子には勝ち目がないのだ。恵理子のしぐさが落ちついていて、表情が美しい。どこか清らかな感じがする。それが香也子の癇にさわる。


〈作品本文の凡例〉https://www.miura-text.com/?p=2463

関連記事

  1. 『果て遠き丘』[ 春の日 ](五)34 上機嫌にツネはいう。……

  2. 『果て遠き丘』[ 起伏 ](三)79 つとめて平静に保子は……

  3. 『塩狩峠』[ かくれんぼ ]33 「そうなんだ。おかあ……

  4. 『塩狩峠』[ 桜の下 ]71 「ヤソなんて、やめれ……

  5. 『塩狩峠』[ かくれんぼ ]247 (甲ノ上だな)…………

  6. 『果て遠き丘』[ 蛙の声 ](七)10 (章子の奴、きっと怒……

カテゴリー

アーカイブ