『果て遠き丘』[ 蛙の声 ](一)22 買い物をすませた恵理子……

買い物をすませた恵理子は、明後日の午後七時、なんといって家を出るべきかと考えながらマーケットを出た。恵理子はさきほどの木片を取り出して見た。かわいい小鳥が巧みに彫られてある。いかにも三K木工のデザイナーらしい繊細な彫りである。それに、丸みを帯びた、感じのいい字がぽつぽつと並べられてある。そっと握りしめながら、恵理子はさっきの道を戻っていく。逆光の中に、家も人も、切り絵のように影が黒い。


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