『果て遠き丘』[ 蔓バラ ](一)13 しかし、この家を出た……

しかし、この家を出たあとの自分はどうなるのか。扶代は、今更この家を出る気はなかった。容一との間はうまくいっている。経済的な面でも、かつて想像したこともない満たされた生活だ。香也子も遠からず結婚するだろう。香也子のことだ、必ず別に新しい家を建ててもらって、そこで新婚生活をはじめるにちがいない。その日は、必ず、二、三年のうちにやってくるのだ。扶代はもはや、細々と女手ひとつで食べていく生活に戻ることはできなかった。もう十年前のように若くはない。特別の能力も才能もない。第一、容一と別れる気はさらさらない。


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