『果て遠き丘』[ 蔓バラ ](二)60 コップが躍り上がった……

コップが躍り上がった。思いがけないの見幕に、さすがに香也子はひるんだ。香也子はいままで、にきびしく叱られたことはない。他の目には我慢のできない香也子ではあっても、容一にはかけがえのない娘であった。その容一の甘さを香也子は敏感に感じ取り、勝手なふるまいをしてきたのだ。が、いま突っ立った容一の顔は、いつもの容一の顔ではなかった。


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