『果て遠き丘』[ 蔓バラ ](三)17 金井は二人を天秤にか……

金井は二人を天秤にかけてみる。金井は中学の時に、よい英語の教師に会って以来、英語に強く惹かれて勉強した。ほとんどはレコードやラジオでの学習が主だったが、中学時代の英語の教師に誘われて、外人宣教師のバイブルクラスにも出た。大学は英文科を出、卒業後ただちに塾を開いた。大学時代も、塾を開くための勉強を、さまざまな形で金井は重ねてきた。塾を開く金は父が出してくれた。公務員をしている父が、こつこつと貯めたなけなしの金だった。幸い家が市の中央にあり、だだっぴろいだけが取り柄の古い家を改造して始めたのだ。それが金井の、一見明るく見える性格のせいか、若さと熱意のせいか、意外に順調に経営は伸びた。このあたりで、できれば塾の建物を新築したいところなのだ。


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