『果て遠き丘』[ 影法師 ](九)6 容一が香也子をかわい……

容一が香也子をかわいいといっても、その愛さえも、香也子は信じていない。本当にかわいいのなら、どうして父と母は別れたのかと思う。父と母が別れたのは、つまりは子供より自分がかわいかったからではないかと、香也子は嘲笑したくなるのだ。男と女の愛も信じられない。この世に、いやというほど離婚があり、失恋があるというのに、どうして人々は、愛だの、恋だのと騒ぐのだろうと、香也子は思うのだ。いまは子殺しの時代だという。自分自身の身勝手な都合で、子供さえ殺す。そんな人間に、何が愛だ、何が恋だと、香也子は怒りさえ感ずるのだ。香也子には誰も信じられない。それなのに、いま見たテレビドラマは、継子継母が、お互いに思いやるドラマだ。馬鹿馬鹿しくてテレビを切った香也子に、章子は、


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