『果て遠き丘』[ 春の日 ](一)21 声が聞こえたのか、聞……

声が聞こえたのか、聞こえないのか、保子はふり返りもしない。淡いみどりの博多帯を、粋に結んだ保子は、横ずわりになっていた。そのふっくらとした腰の肉づきが、四十八の年齢より、四つ五つ若く見せている。保子は軽く口をあけ、まばたきもせずにテレビを見ている。あまり高くも低くもない鼻にも、片手を畳についたその指のひらき具合にも、女らしさが漂っている。


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