『果て遠き丘』[ 春の日 ](九)15 保子に逃げられたくや……

保子に逃げられたくやしさもあって、容一は、保子の出たあとすぐに扶代を家にいれたのだが、まもなくその扶代にも、気にいらないところが見えてきた。同じ靴下を何日はいていても、扶代は替えてくれようとはしなかったし、床の間の花がとうにしおれていても、気づかないこともあった。風の日など、廊下がザラザラと埃っぽくなっていても、扶代はいっこうに気をつかわなかった。すると妙なことに、容一のほうで、扶代のすることが気になりだしたのだ。


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