『果て遠き丘』[ 春の日 ](五)20 そのときも、恵理子は……

そのときも、恵理子は焼却炉にゴミを捨て、いつものようにマッチで火をつけた。レモン色の炎を見つめながら、恵理子は母の保子が哀れになっていた。あの病的な潔癖さがなければ、母の人生はもっと平穏であったろうと思う。恵理子も、父や妹と別れずに、平和な毎日を送れただろうと思う。保子は潔癖なわりに、ギスギスしてはいない。ふだんは静かなものいいをするやさしい母なのだ。料理も上手だ。


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